ヨーロッパのリサイクル事情 スペイン編 Vol.1
~知られざるリサイクル大国の実力~
「欧州のリサイクル先進国」といえばどんな国を思い浮かべるでしょうか。ドイツやスイス、スウェーデンなどは資源リサイクル率の世界ランキングで常に上位に名を連ねている環境大国ですが、
そういった国々に勝るとも劣らないポテンシャルを秘めた国があります。
情熱の国、スペインです。
今回からは、複数回にわたってスペインのリサイクル事情についてお届けします。
数字で見る各国の現状とスペインのリサイクル処理能力
OECD(*1)加盟国のリサイクル率をみてみると、2021年時点で1位スロベニア(52.8%)、2位ドイツ(48.6%)、3位スイス(42.0%)となり、韓国、スウェーデン、ルクセンブルクと続いていきます。 上位10カ国のうち9カ国をEU諸国が占めている中、スペインはランクインしていません。(そう考えると韓国さん、素晴らしいですね)
一方、国家別のリサイクルのキャパシティ、すなわち国内のリサイクル設備が1年間にリサイクルできる総量で考えてみると、スペインは首位ドイツに次いで2位のキャパシティを誇ります。
ドイツの人口8451万人、スペインでは4781万人という人口差がありますから、国民1人あたり換算で言えばドイツを超える実力を持っているのです。
それもそのはず、スペインはプラスチックの利用に対し、他のEU諸国以上に厳しいレギュレーションを敷いています。
例えば、2023年1月よりプラスチック税が導入され、再利用できないプラスチック製の容器包装の製造者や輸入者などに対しプラスチック含有量1kgあたり0.45ユーロ(約73円)が課税されます。
また、バージン材を用いて容器包装を製造する場合、こちらもバージン材含有量1kgあたり0.45ユーロの支払い義務を負います。
同様の施策を取る国は他にもありますが、イギリスでは製品中に30%以上の再生プラを使用すればバージン材使用のペナルティが免除される仕組みになっているのに対し、スペインではバージン材使用量に応じてペナルティを負うなど、より厳格な規制を設けています。
*1 Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構
https://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/oecd/index.html
強化される環境施策
現在、スペイン国内では約2000社の製造者がバージン材を利用して製品を製造しており、今後も前述のような動脈産業側へのレギュレーションはさらに厳しくなるものと予想されます。 そして、市民レベルにおける廃棄物の分別を含む静脈側での取り組みも非常に活発になっています
先に述べた先進的な環境政策と共に、民間においても環境産業が成熟しつつあるということを実感しました。
次回以降は、その先進的な内容について具体的にご紹介していくつもりです。
今回から始まりましたスペイン編のコラム、どうぞお楽しみに!