ヨーロッパのリサイクル事情 スペイン編 Vol.2
~スペインから学ぶMSW(都市廃棄物)リサイクルの可能性~

さて、前回から始まりましたスペイン編のコラム、今回のテーマはズバリ「MSW」です。日本ではあまり耳にしない言葉だと思いますが、リサイクルに携わる業界の方はご存知かもしれません。MSWについてお話するにあたり、まずはスペインのごみ収集の事情について触れてみたいと思います。

スペインの分別収集:色で分かれるごみの世界

スペインにおいて、ごみの収集は日本と同じように分別収集方式が採用されています。自治体によって多少の差はあるようですが、袋やコンテナの色によってわかりすく以下の5種類に色分けされています。

・茶色:オーガニック(生ごみ、汚れた紙ごみ、庭のごみ 等)
・青色:紙ごみ、段ボール 等
・緑色:ガラス
・黄色:パッケージ類(プラ包装材、飲料ボトル・缶 等)
・灰色:MSW(都市廃棄物)

飲料PETボトル・缶とその他のパッケージ類がひとまとめにされている等、日本とは異なる部分も見受けられます。これは機械化されたソーティングセンターの有無や、資源効率と収集コストのバランスによってもたらされた違いでしょうか。

とはいったものの、基本的には日本とよく似た分類でごみの収集がなされていることがわかります。しかしその中で、ひとつだけ見慣れない分類があります。MSW、上から読んでも下から読んでもMSWですね。(伝わりますでしょうか…)

MSWの定義と現状:複雑な都市廃棄物の実態

MSWとはMunicipal Solid Wasteの頭文字を取った略語であり、日本語では「都市廃棄物」と訳されます。定義によれば、一般家庭や民間企業、公共施設から出る固形廃棄物を指し、紙、ポリ袋、家具、衣類、ボトル、ゴム製品、金属…等々、あらゆる一般廃棄物の集合体とも言える複雑なごみです。

世界では毎年約21億トンもの都市廃棄物が排出されており、リサイクルされているのはそのうちわずか16%程度(紙や金属等含む)と言われています。スペインにおいても、再資源化スキームが確立しているパッケージ類等と比較すると、再資源化が非常に困難な廃棄物として認識されてきました。

リサイクル技術の挑戦:MSWからの資源抽出

環境先進国であるスペインやドイツにおいて、このMSWの再資源化というテーマは最新かつ重要な課題の一つです。今回我々が訪ねたリサイクル工場では、膨大なソーティング設備によってMSWからプラ等の資源を抽出し、ポリ袋(ごみ袋)への製品化までを行う実証事業が行われていました。

MSWに含まれるプラスチックは総量の約12%と、割合で見れば僅かなものと考えてしまいがちですが、MSWは他の廃棄物に比べて圧倒的に量が多いため、相当な量のプラスチックが含まれているというわけです。つまり、これまで持続不可能な方法で廃棄されてきたMSWを資源の循環に組み込むという取り組みには、大きな量的意義があると言えるのではないでしょうか。

さて、少し話を戻しましょう。前述のように、スペインでは色分けされた袋や箱でごみの分別収集が行われています。ただし、箱の中を覗き込んでみると、その分別精度はお世辞にも良いとは言い難いものでした。

分別収集には当然ながら分類が多いほど多くのコストがかかるため、やり過ぎも良くないものではありますが、堆く積まれたMSWの山を見渡しながら、そのごった煮具合に大きな衝撃を受けました。つまり、何が言いたいかというと、「スペインに出来て日本に出来ないはずはない!!」と、私見を述べたところで今回のコラムを締めたいと思います。